在ニューヨーク(New York)総領事館:JAMSNET
2008年8月7日
- 日時:2008年6月26日(木)18時〜20時
- 場所:総領事館領事待合室
- 参加者:43名
1.冒頭挨拶
冒頭、当館仲本医務官より下記のとおり挨拶を行った。
本日は、JAMSNET主催によりJASSIによる講演会を行うこととなった。 JAMSNET、邦人医療支援ネットワークは、ニューヨーク周辺の医療系邦人支援グループ(NPO)同士の情報交換、相互連携の構築を目的として、2006年1月に発足した。代表は、米国日本人医師会の本間先生に務めていただいており、総領事館もバックアップをしている。
そのネットワークにJASSIも参加してもらっている。JASSIは1981年に設立された非営利団体で、長くニューヨークにお住まいの方はご存じだと思う。これまで20年以上、医療福祉等の面で、在留邦人及び日系人の支援を行って来ている。
米国の医療制度は複雑なため米国人ですらよく理解していないという話も聞いているが、本日のテーマである米国の医療制度については、皆さんの関心が高いと承知している。総領事館にも医療保険に関する相談が時々寄せられており、今回、JASSIのスタッフより説明してもらうこととなった。
2.JASSI(日米ソーシャルサービス)について
JASSIの鳥巣氏より下記のとおり同団体に関する説明があった。
ニューヨーク州で社会福祉関係のサービスを日本語で提供している団体である。当団体では、主に4つのサービスを行っている。今回の講演会のような日本語によるワークショップ(米国の種々社会福祉制度等につき説明)、高齢者プログラム、ホットラインによる日本語相談(トラブルに遭った場合どのようにして解決したらいいか)、カウンセリングである。是非利用して頂ければと思う。
3.健康保険が無い人のためのサバイバルガイドについて
JASSIの工藤氏より下記のとおり健康保険が無い人のためのサバイバルガイドにつき説明があった。
(1)イントロダクション(クイズ形式)
- (イ)アメリカでは何人に1人が保険を持っていないか:6人に1人
- (ロ)1家族(4人)における健康保険料は平均で年間いくらか:約$12000
- (ハ)アメリカの家庭では家計の約何%を医療費として支出しているか:10%
(2)民間の保険の値段がとても高い。
健康保険を社員に提供していない会社もある。家族までカバーしないケースが多々ある。
(3)ケース・スタディその1
Aさん家族は子供2人の4人家族で妻は専業主婦。子供たちは、公的保険でカバーされるが、両親は資格に該当しないため保険を持っていない。会社を通じて自分で保険を購入しようとすると毎月400ドルかかり、月1600ドルの収入の4分の1が保険料と消える事になる。収入の90%は生活費に消えるため、両親は保険なしで生活している。
→低所得・一般家庭にとって健康保険は高すぎる。
(4)ケース・スタディその2
Bさん夫婦は夫が美容師で、妻はパート勤め。夫の仕事先から保険が支給されないため、2人とも保険なし。夫が指に怪我をして、炎症を起こすが、高額な医療費を恐れて自分で治療をしていた。怪我は悪化するばかりで、最後に我慢できなくなるほど酷くなり、緊急入院し指を切断することになった。
→保険をもっていない人は、怪我や病気をしていても、病院で治療を受けることを躊躇する。
(5)保険に加入しているに越したことはないが、値段が高すぎて保険に加入できない人はどうすればよいか。
保険に加入(購入)できない人は、その対応策及び方法、病院のシステムを知っていることが大切である。具体的には、NY州の健康保険を活用する、地域にある低価格で受けられる病院やクリニックなどを有効活用する、病院やNYの医療システムについて精通するという方法がある。
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(6)健康保険をもっていない人が陥るケースその1
保険を持っていない人が病気や怪我の治療を先送りにしてしまう。
→地域にある低価格で受けられる病院やクリニックなどを有効活用する。
- HHCオプション
- (イ)HHCオプションとは、Health & Hospital Corporationの頭文字で、NY市内にあるHHCオプションに加盟している病院やクリニックで安価な治療が受けられ、収入に応じたスライディングスケールで治療費が設定される。
- (ロ)HHCオプションの利用法
- STEP1:加盟病院・クリニックでファイナンシャルカウンセラーと面会。
- STEP2:ニューヨーク州の保険の加入資格審査。
- STEP3:HHCオプションのスライディングスケールによる支払い。
- (ハ)必要書類
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- ・生年月日の記載された身分証明書
- ・住所証明(郵便物)
- ・収入証明
- (ニ)ビザがなくても利用できるため、ビザステータスの心配がいらない。また、全ての個人情報に関する秘密が厳守される。
- (ホ)治療費は、収入・家族構成などに合わせ、スライディングスケールで決定される。
- ・クリニック&緊急治療:$15〜$60
- ・処方箋:$10(一つにつき) *最大$40まで
- ・外来手術&MRI:$150〜$850
- ・Medicareを持っている人のクリニック&緊急治療:$10〜$17
- ・入院:$150〜$5000
- (ヘ)HHC加盟病院&クリニック
- ・ブロンクス
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- Lincoln Medical & Mental Health Center
- Morrisania Diagnostic & Treatment Center
- Segundo Ruiz Belvis Diagnostic & Treatment Center
- Jacobi Medical Center
- North Central Bronx Hospital
- ・ブルックリン
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- Woodhull Hospital & Mental Health Center
- Cumberland Diagnostic & Treatment Center
- Kings County Hospital Center
- East New York Diagnostic & Treatment Center
- Coney Island Hospital
- ・マンハッタン
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- Harlem Hospital Center
- Renaissance Health Care Network Diagnostic & Treatment Center
- Metropolitan Hospital Center
- Bellevue Hospital Center
- Governor Healthcare Services
- ・クイーンズ
-
- Elmhust Hospital Center
- Queens Hospital Center
(7)健康保険をもっていない人が陥るケースその2
高額な医療費を請求され、どうしたらいいか分からない。
→病院、NYの医療システムについて精通する。
- STEP1:NY州の公的保険に加入できるかどうか。
- STEP2:チャリティーケア・プログラムに申し込む。
- STEP3:支払いプランを病院のファイナンシャルプランナーと相談する。
高額医療費の対処法
(イ)保険を持たずに病院やクリニックで治療を受けると支払能力の有無に関わらず全額自己負担するように請求され、高額な医療費による借金や負債を抱えてしまう上、医療費滞納や支払い拒否は、クレジット・ヒストリーに悪影響を及ぼし、取立て屋に委託される場合があるので、注意が必要である。
コーチゾンが行われる方法
- (ロ)病院のシステムを利用する方法
-
- ・病院での出来事や担当医・スタッフなどの記録を取るなどし、問題を自分で解決できない場合は、第三者(JASSI、弁護士等)を介入させる。
- ・病院のソーシャル・ワーカーと良好な関係を築く 。
- ・患者としての権利や利用可能なプログラムについての知識を持つ。
- (ハ)病院でのファイナンシャル・アシスタンスに関する法律が2007年にNY州で制定された。
- ・退院後、ファイナンシャル・アシスタンスに申し込める期間が90日間となった。
- ・病院は、患者が支払い可能な分割払いプランを立てなくてはならない。
- ・必要に応じて通訳を提供しなくてはならない。
(8)保険に加入していない人のためのサバイバルガイドのまとめ
- (イ)NY州の安価な健康保険を活用する。
- (ロ)地域にある低価格で受けられる病院やクリニックなどを有効活用する。
- (ハ)病院のシステムについて精通する。
4.ニューヨーク州の医療保険について
JASSIの鳥巣氏よりニューヨーク州の医療保険についてにつき説明があった。 ニューヨーク州は主に低所得者を対象に医療保険を提供している。(1)メディケイド(Medicaid)
- (イ)該当資格
- ・医療費の支払いを抱えている。
- ・サプリメンタルセキュリティーインカム(SSI)を受けている。
- ・規定の所得、資産、年齢、障害に該当する。
世帯数 | 月収 | 資産 |
1人世帯 | $725 以下 | $4350 以下 |
2人世帯 | $1067 以下 | $6400 以下 |
3人世帯 | $1100 以下 | $6600 以下 |
4人世帯 | $1109 以下 | $6650 以下 |
- (ロ)受けられる医療サービス
- 禁煙治療、一般の治療・定期検診・歯科治療、病院への入院と通院、検査・レントゲン、老人ホームでの介護、在宅介護、精神科関係での受診・カウンセリングセンター、ファミリープランニングサービス、小児科での検査・診断・治療、薬・車いす等の医療器具、クリニックでのサービス、通院の為の交通費、救急車サービス、妊娠中の受診、保険やメディケアプレミアムの支払い、その他の医療サービス。
(ハ)保険料、治療費、コーペイ、処方せん薬の全てを政府が負担してくれる。
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(2)ファミリヘルスプラス(Family Health Plus)
- (イ)該当資格
- ・19歳〜64歳。
- ・所得や資産が高すぎてメディケイドに該当しない。
- ・単身、子供のいない夫婦、子供がいて所得の限られている夫婦。
- ・ニューヨーク州の住民
- ・米国市民もしくは合法的に滞在している。
世帯数 | 月収 (Gross) | 資産 |
1人世帯 | $867 以下 | $13,050 以下 |
2人世帯(夫婦) | $1,167 以下 | $19,200 以下 |
2人世帯(1人親+子供1人) | $1,750 以下 | $19,200 以下 |
3人世帯(夫婦+子供1人) | $2,200 以下 | $19,800 以下 |
4人世帯(夫婦+子供2人) | $2,650 以下 | $19,950 以下 |
- (ロ)受けられる医療サービス
- 一般の治療・定期検診、病院への外来受診と入院、処方せん薬・禁煙治療、検査・レントゲン、眼科、スピーチ、聴覚、理学療法(リハビリ)、車いす等の医療器具、救急治療・救急車サービス、薬物・アルコール依存の治療、糖尿病に関する治療器具、ホスピスでの看護、がん治療、歯科治療、ファミリープランニングサービス。
(ハ)申し込みに当たっての加入料や保険料はかからないが、一般的にコーペイメント、もしくはコーペイと呼ばれている医療費の一部を負担することとなる。
(3)チャイルドヘルスプラス(Child Health Plus)
- (イ)該当資格
- ・19歳以下。
- ・ニューヨーク州の住民。
- ・規定内の所得である。
- (ロ)受けられる医療サービス
- 子供の定期検診、健康診断、予防接種、病名の診断・怪我や病気の治療、レントゲン・検査、入院を必要としない手術、救急治療、処方せん薬、処方せんのいらない薬、手術を含む入院時の治療、キモセラピー(化学療法)・血液透析の為の通院、アルコール・薬物依存の治療、メンタルヘルスサービス、歯科治療、視覚ケア、聴覚・言語の治療、ある種の医療器具、救急車サービス、ホスピス。
- (ハ)保険料
保険料は所得に応じて$0、$9、$15、全額自己負担の4段階に分けられる。
世帯数 | 月収 |
1人世帯 | $1,380以下 |
2人世帯(親+子供1人) | $1,866以下 |
3人世帯(両親+子供1人) | $2,346以下 |
4人世帯(両親+子供2人) | $2,826以下 |
世帯数 | 月収 |
1人世帯 | $1,924 以下 |
2人世帯(親+子供1人) | $2,590 以下 |
3人世帯(両親+子供1人) | $3,256 以下 |
世帯数 | 月収 |
1人世帯 | $2,160 以下 |
2人世帯(親+子供1人) | $2,917 以下 |
3人世帯(両親+子供1人) | $3,667 以下 |
4人世帯(両親+子供2人) | $4,417 以下 |
(ニ)医療費の一部を自己負担するコーペイメント(コーペイ)はない。
(4)ヘルシーニューヨーク(Healty New York)
- (イ)該当資格
- ・ニューヨーク州の住民。
- ・現在雇用されている、もしくは過去12ヶ月のうち雇用されていた。
- ・雇用主から医療保険が提供されない。
- ・過去12ヶ月の間、医療保険がなかった、もしくは事情により医療保険を失った。
- ・特定の事情がある。
- ・メディケアの資格に該当しない。
- ・規定内の所得である。
- →所得とは、給与・印税、扶養手当、自営業所得、家賃収入、投資からの収益、預金口座の利子、厚生年金、年金(ソーシャルセキュリティー)、失業保険を含む総所得であり、公的支援、サプリメンル・セキュリティーインカム(SSI)、養育費・フォスターケア手当、家屋を売却したお金、預金の引き出し、資産売却所得は所得に含まれない。
- (ロ)受けられる医療サービス
- クリニックでの診断・治療・専門医への紹介、手術・それに関する麻酔、入院(病室や看護、食事や医療器具を含む)、病院での診断と治療、手術前の検査、救急治療(救急車は含まない)、手術やがん治療のセカンドオピニオン、手術後・退院後のホームヘルプサービス(年に40回まで)、手術後・退院後のリハビリ(年に30回まで)、予防接種、マンモグラム(乳房撮影)、子宮がん・前立腺がん検査、3年に一度の定期検診、妊娠中の受診、生まれた子供の定期検診と予防接種、糖尿病に関する医療器具と自己管理の教育、レントゲン、臨床検査サービス、放射線治療、キモセラピー(化学療法)、透析療法、手術や入院の際の血液、血液製剤。
- (ハ)含まれない医療サービス
- 鬱や不安障害・多動性障害等の精神疾患の治療や処方せん薬、アルコール・薬物依存の治療とそれに関する処方せん薬、カイロプラクティック・理学療法(手術後や入院後を除く)、ホームヘルプサービス(手術後や入院後を除く)、ホスピス、救急車・ 緊急時を省く州外での治療、歯科、眼科、補聴器。
- (ニ)プランと月額保険料
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- ・ディダクタブル+処方せん薬なしのプラン($)
- 1人世帯:$160〜$220、2人世帯:$320〜$480
- 親及び子供:$310〜$420、家族:$470〜$640
- ・ディダクタブル+処方せん薬付きのプラン($$)
- 1人世帯:$180〜$250、2人世帯:$320〜$480
- 親及び子供:$360〜$550、家族:$560〜$720
- ・ディダクタブルなし+処方せん薬なしのプラン($$$)
- 1人世帯:$210〜$290、2人世帯:$410〜$550
- 親及び子供:$410〜$550、家族:$610〜$850
- ・ディダクタブルなし+処方せん薬付きのプラン($$$$)
- 1人世帯:$230〜$330、2人世帯:$470〜$730
- 親及び子供:$460〜$630、家族:$710〜$980
- →ディダクタブルとは、医療費がある金額に達するまでは自己負担をすること。金額は1人世帯で$1150、2人世帯以上で$2300となる。その後は保険が適応されコーペイのみとなる。
- →処方せん薬付きのプランの場合は、毎月$100ドルの追加保険料を負担するが、$3000ドルまでカバーされる。処方せん薬なしのプランの場合は、追加保険料はないが、処方せん薬は全額自己負担となる。
(ホ)一般的にコーペイメント、もしくはコーペイと呼ばれている医療費の一部を負担することとなる。
(ヘ)定期検診、予防接種、妊娠中の受診、前立腺・子宮ガン検診、マンモグラム(乳房撮影)については、ディダクタブルの金額が達してるいないにかかわらず、コーペイのみでサービスを受けることができる。
5.閉会挨拶
最後に当館平川領事部長より下記のとおり挨拶を行った。
総領事館領事部の大きな仕事の一つとして在留邦人への各種支援がある。その中でも医療福祉分野は在留邦人の方々にとって関心の深い分野であると承知している。この分野は専門性も高く総領事館としても承知していないことがあるが、幸いニューヨークには、JAMSNETという医療関係に知見の深い人たちが集まったネットワークがある。総領事館もネットワークの一員として、JAMSNETから様々な情報を入手している。今後ともJAMSNETを通じてこのような講演会等の企画を実施し、在留邦人の皆様へ有益な情報を提供していきたいと考えている。
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