心は何
本格? 本気モード?
心をイメージ。なんとかイメージできないか? 思い描く、思い浮かべる。
2008.6.4 出勤電車の中
心は、思っている自分(無意識でない意識)。
・ループして戻ってくる情報。
・行き場のない(出力しない)情報。
・・情報とは言葉?イヤ。
△青空キレイ…出力のない情報→快感(不快、不安)
養老孟司:心は脳の機能、結局脳の機能はアナロジーじゃないかと。
外部からの入力のかわりに、脳の中で入出力を回す。
茂木健一郎:心は脳のニューロンの発火に伴って起こる「脳内現象」。
・個々のクオリアの質感が、ニューロン発火クラスターのパターンから、どのように生まれてくるか?質感自体はどのように定式化されるか?
・「心に対する感覚の進化」…現在の私たちの心のあり方は、人類が2千数百年にわたって積み上げてきた文化的革新の成果。
・「システム論的転回」…感覚的クオリアを生み出すニューロンのネットワーク、およびそれにマッチングされる志向性を生み出すニューロンのネットワークが存在しなければ、「私の心」は生まれない。
・ニューロンの関係性から、私たちの主観的体験の全てと、そのような体験をする「私」という主観性が生じる。
・意識は、脳のニューロンのネットワーク全体のシステム論的性質から生み出されている。
・「錬心術」を超えて…心と脳の関係の解明には、技術的な議論の積み上げと同時に飛躍も必要である。
福田伸一:生命現象に必要な秩序の精度を上げるために、生物は原子に比べてこんなに大きい。(20万倍)
・2万数千種類のピース(タンパク質等)が、それぞれ何億以上存在する。
⇒生命が秩序を維持する唯一の方法として、タンパク質は作られる際から壊される。
□「脳研究の最前線」理化学研究所 脳科学総合研究センター
まえがき「こころに向かう脳科学」 伊藤正男(創立10周年)
第1の手がかり…感覚情報入力から運動信号出力の経路
谷藤 学 (1)脳のシステム
藤井 直敬 (8)つながる脳
田中 啓治 (5)脳はどのように認知するか
第3の手がかり…神経回路網
岡本 仁(発生) (2)脳の進化と心の誕生
甘利 俊一 まとめ(12)脳は理論でわかるか-学習、記憶、認識の仕組み
谷 淳(ロボット)(10)ロボットから脳を読み解く
深井 朋機 (6)脳はどのように情報を伝えるのか
中原 裕之(情動、報酬系)(11)快楽が脳を創る
第2の手がかり…脳の情報の流れを生み出した進化の過程
(岡本 仁(発生)(2)脳の進化と心の誕生)
岡ノ谷一夫(言語)(4)言語の起源と脳の進化
入来 篤史(道具)(3)知性の起源-未来を創る手と脳のしくみ
第4の手がかり…疾患から
西道 隆臣 (7)アルツハイマー病を科学する
加藤 忠史 (9)精神疾患から脳を探る
この12人の"心"のイメージはどのようなものか?
第1の手がかり…感覚情報入力から運動信号出力の経路
□谷藤 学(1)脳のシステム
(内部表現を作るメカニズム、内部表現から認識が成立する過程を理解する。)
・外部環境の分析…適度に複雑な図形特徴の組み合わせとして脳の中に表現されている。
→「どこ?」「何?」の結びつけ問題
→いろいろな脳の部位が互いにつながり、属性や特徴をつなげる。
・関心のない外部環境の信号はシャットアウト。→「注意」の機構。
・運動の上達…細胞レベルで神経回路が組み替わる→一朝一夕にはいかない。
・「自動的な注意」「能動的な注意」-「注意」-方向性を持った意識-意識を制御するのも注意。
-「意識」-自身の行動や知覚が自分でわかっている状態-切り替りがある-外部刺激でなく自発的な神経活動による。
●天気のアナロジー…食物-脳細胞にエネルギー-細胞が自発的に活動-神経ネットワークにも方向性のある活動パターンが生じる。-そのパターンが風がゆらぐように変化→意識や能動的注意の切り替わり。
・鍵をにぎる神経細胞の配列とネットワーク
・脳の活動はどう読み出されているか。
…物体像は図形特徴の組み合わせとして抽出。
…それぞれが別の図形特徴に関係した複数の細胞によって、一つの物体像が表現されている。
・複数の細胞の組み合わせをどうやって「読み出す」のか。
・「誰かが」という読み出しの主体を仮定してしまう問題。
・はっきりした答えはない。「モノの考え方」に何か大きな革新が必要かも。
第1の手がかり…感覚情報入力から運動信号出力の経路
□藤井 直敬(8)つながる脳
(知的高次認知機能の進化的基盤を構成する推論/論理思考などの萌芽的機能のシステム神経科学的解析。)
・脳と「こころ」
こころ:自分の視点を自分から他人に動かし、他人の視点からモノを考える能力。
・聞きたいことしか聞かない脳 (・・脳を仮想空間につなぐ)
・アップグレードする脳:レガシー【遺産、遺物】だけの体の中で、互換性を最優先したマイナーアップグレードの連続。
・一つの神経細胞が情報の流れの中で果たす役割は、オンかオフかだけ。(生体電気信号)
・脳科学の課題・・高度な適応能力をもった脳
・社会と脳(再現性を最重視してきた科学のアプローチを変えて、瞬間の機能、つまり一回性を考慮に入れないと、社会の中での脳機能を科学的に扱えない。)
・これからの脳科学(BMIの技術、神経倫理、脳デバイス)
第1の手がかり…感覚情報入力から運動信号出力の経路
□田中 啓治(5)脳はどのように認知するか
(高次脳機能解明のためには、大脳皮質連合野の働きと、連合領野間および連合野と皮質下の部位の間の関係。)
・情報の分離と統合を繰り返す情報処理の積み上げ。
・たとえば網膜の情報処理(空間コントラストの検出、明るさのコントラスト、色のコントラスト)
・水平細胞とアクマリン細胞が網膜を賢くしているらしい。
・大脳の第一次視覚野における輪郭の検出。(受容野も千差万別)
・高次視覚野の役割:背側視覚経路…物体間の位置関係
・腹側視覚経路…物体の弁別に関する情報の処理
・MT野の細胞の多くは、刺激の動きの方向(動き)
・MST野…広い視野の動き
・カテゴリー化は認知の最大の武器…異なる図形特徴を表す下側頭葉皮質細胞を集めた細胞集団。
・注意が記憶を促す…ワーキング記憶の認知処理過程には、選択的注意が向けられた感覚入力だけが入っていく。(早期選択説、後期選択説)
・注意の制御信号は脳のどこの部位から発せられるのか。
頭頂葉の下部、下頭頂葉と前頭前野の背外側部、視床枕-初期視覚野に注意制御信号を直接送る。
前頭前野の背外側部、視床枕-上の2つを介して初期視覚野を制御。
・注意移動の3つのステップ
「消去」(病側の物体が健常側の物体によって消去される。)
…注意の解放→注意の移動→注意の捕捉(空間位置、物体)
頭頂葉が注意の解放に関わる。視床枕が捕捉、注意を集中させる。
・選択的注意は、受容される情報の一部が選ばれ、処理が促進され、行動や記憶などより深い処理に入っていく過程全体を表している。
agrophobiaうつ病
・意識の起源
・・受容された感覚情報が意識される。→脳の中では、何が起き刺激が意識に上るのか。
・・視覚および認知が意識的になるのは、目の前の状況に対して統一した理解を作り行動を一にするため。
…なら、意識的知覚に対応する細胞活動は、行動の指令を発する前頭葉、前頭前野に向かって直接入力を送る脳部位に限局される。
・・第一次視覚野の細胞活動は、意識的な知覚と関係しないが、下側頭葉皮質の細胞活動は意識的知覚によく相関する。→第一次視覚野の活動がすでに意識的知覚と相関している。
・・大脳皮質の領野間結合は双方向的。多くの領野は大きく複雑なループを形成して機能している。
・・受容された刺激が、前頭前野へ伝わって選択的注意を引き起こし、前頭前野が頭頂連合野とともに高次感覚野活動を高める。
…さらに高次感覚野からは逆行性の結合によって初期感覚野にも活動が広がる。
…こうして大脳皮質の大きなループによって、刺激の処理がさらに進められることによって、刺激が意識的に知覚されることに対応するのではないだろうか。
第3の手がかり…神経回路網
□岡本 仁(発生) (2)脳の進化と心の誕生
(ニューロンは、脳組織内を移動しながら分化してシナプスを形成する。脳の神経回路網の成立機構を研究。)
・脳の進化(遺伝子と脳の構造)
・・脳の発生と部域特異化
…ホメオティック遺伝子群(進化の過程で分離):遺伝子の突然変異が身体の作られ方に影響を及ぼす。(【ホメオ】:類似の)
…ホメオティック遺伝子群の並びと体節構造の並びが同じ順序。
…すべての脊椎動物のゲノムには、ホメオティック遺伝子群と非常に類似した遺伝子群が同じ順に並んでいる。
・ ・ホメオティック遺伝子群の塩基配列のすべての遺伝子が、非常に類似した60個のアミノ酸配列をコードする180塩基の領域を持つ。
…この塩基配列がホメオボックス
…これにコードされるアミノ酸配列がホメオドメイン。
…ホメオドメインのように、複数の遺伝子の読み取りを一括して制御するようなタンパク質を転写制御因子とよぶ。
・ ・進化の過程で保存されたホメオティック遺伝子群(変更されにくい)。
・ ・脊椎動物において、脳は進化の過程で変化に富んだ器官のひとつ。
・・ツールキット遺伝子
・・種を越えて保存されている脳の初期神経回路網。
・・脳のでき方は、発生初期の過程までは全脊椎動物を通じて高度に保存されている。
・心の起源(情動と記憶の脳内メカニズム)
情動:環境の変化に応じて個体の内部環境が、常に生存により適した状態になるように、行動を制御するために、進化があみだした脳の仕組み。
・・脳はもともとこの機能を達成するために、進化の過程で作られた器官。
・・脳を持っている動物で、情動系神経回路を持っていない動物はない。
・・情動をささえる先天的な記憶(ゲノム)
・心を生み出す神経回路
・・行動制御のための神経回路:皮質、基底核、視床ループ
・・「情」:周囲の状況に対する価値判断
・・「知」:周囲の状況に対する認知
・・経験した出来事に、自分にとっての情動的価値判断を付加した情報を、脳の中に記憶として蓄えていく。
・・これらの情報は、海馬と扁桃体を介して脳に入力される。(情動的価値判断を伴った記憶の集合体。)
→自伝的自我と呼ばれる人格の基礎を形作る。
→このような行動プログラムは、皮質、基底核、視床ループ(間脳)に記憶として蓄えられる。
・行動プログラムの書き換え
・・皮質、基底核、視床ループ/ドーパミン神経細胞を含む行動制御神経回路/そこへ情報を入力する海馬や扁桃体など:::脳の基本構造としてすべての動物で保存
・・脳は、周囲の情報の変化に応じて、自動的に行動プログラムを変更できるという特別な機能をもったコンピュータ。
・・刷り込み:生まれて初めての一度だけの学習によって、神経回路が改変される。一回限りの神経回路の改変を許すような遺伝子発現の調節機構。
・ヒトの脳はなぜ進化したのか
・・ヒトの大脳皮質は並列コンピュータ。
・・行動制御神経回路ループ群の直列つなぎを可能にする脳の進化。
・脳と心の研究の行方
・・記憶は同時に発火する神経細胞の組み合わせという形で蓄えられる。
・・海馬や扁桃体がどのように皮質・基底核・視床ループに行動のプログラムを刻み込めるのか、まだ不明。
・・またどのように相互作用し、情報の照合とプログラムの選択が行われるかも不明。
第3の手がかり…神経回路網
□甘利 俊一 まとめ(12)脳は理論でわかるか-学習、記憶、認識の仕組み
(脳にヒントを得た脳型の情報処理システムの基本原理を、数理的な手法を用いて解明し、脳の理解と工学的なシステムの応用を目指す。)
・脳はどうしてできたのか
(宇宙の始まりと生命)
●140億年前ビッグバンが起こった。
巨大なエネルギー出現→物質へ変化(この時、時間と空間が出現=宇宙)
・30~40万年で温度が冷え
・数億年で星が生まれた。
・(80億年たち、)45億年前に地球が生まれ
●36億年前に生命が生まれた。
・・生命…世代を超えて自分を再生産する仕組みを持っている物質。
・・自己を再生産するには、自分の情報を次に伝える必要がある。=DNA(遺伝子)
・・遺伝子があたかも自己の増殖を目指して、自然界を生き抜く仕掛けが現れる。(利己的な遺伝子)
・・これは、これまで宇宙を支配していた物質の法則と違って、情報が主役となった。
(脳を支配する情報と心)
・6億年前(30億年たつと)単細胞の生命体は、多細胞生物を生み出す。(動物、脳)
・・環境の中を生き抜くため、情報を専門的に担う神経細胞を生み出した。
・・それをネットワークにつないで脳が出現した。脳は、外界の情報を分析し記憶し、行動を決定する。
・・ここでは、DNAなどおかまいなしに、高次の情報が主役。脳は、こうした情報が働く場を提供する物質的な仕組み。
・100万年前に人類の祖先らしきものが出現。
・10万年前に、現代人と同じ脳を持つ現生人類が現れた。
●ここにもう一つの奇跡"心"が現れた。
・・心は、脳が作り出した機能。
・・しかし、心は脳を支配し、心の命ずるままに生きている。
▼…学習と認知にかかわる理論モデル「パーセプトロン」と
連想記憶にかかわる理論モデル。
ヨーグルトの重量損失は、 *をよ
・学習と認知のモデル「パーセプトロン」(感覚層、連合層、判別層をつないだ装置)
・・脳が認知し学習する仕組み
…認識(情報)の流れ: 情報→感覚器→情報処理→判定→行動
…重みが決まれば答えが決まる。重みを変れば違った答えになる。
…どんな課題が与えられても、学習によって重みを変えることにすれば、何でもできそう。
…この重みは、連合層のニューロン信号が、判別層のニューロンにつながるときのつなぎ目で決まる。(シナプス)シナプスの分子の仕組みが変わり、重みが変化する。
・・学習の仕組み
パーセプトロンの収束定理:例題の信号が線形分離可能な配置を取るなら、有限回の学習で例題を正しく識別する答えが得られることを、数学的に証明。
・・多次元の効用
・・パーセプトロンの教えるもの
・ ・学習機械としての多層パーセプトロン
…アナログ方式のパーセプトロン …誤差逆伝播学習法(バックプロバケーション)
…万能学習機械パーセプトロン …脳はパーセプトロンか
…パーセプトロンの数理脳科学 …機械学習理論の台頭
・・連想記憶のモデル
…日常経験する事項は、大脳皮質で処理され、その意味や重要性が分析され、海馬(ヒポキャンパス)に蓄えられる。
…海馬は大脳皮質と連携を保ちながら記憶を整理し、時間をかけて大脳皮質に長期記憶を作り出す。
…大脳皮質では、情報を処理する各場所にそれに関連する記憶が蓄えられ、記憶を用いた情報を用いた処理が行われる。処理と記憶は一体となっている。
…人の記憶の特徴は連想性。
…連想記憶はどのようなニューロンの回路で実現できるか?
-分散記憶と想起の力学:パターンそのものを蓄えているわけではない。パターン内部の関係を結合の重みとして蓄える。
:人間の想起は、記憶の種(結合の重み)を手がかりに、ここから相互作用によって必要なパターンを創りだす。いつも記憶の内容を創りだす過程である。そこには誤りも起こりうるし、突然の飛躍もある。
-記憶のアトラクター(回路の興奮状態の落ち着き先)
-連想、予測、カオス思考
・・脳の海馬と連想記憶…海馬は結合の重みをどんどん変えていく。…連想と認識
・・脳型コンピュータと連想記憶
…脳の仕組みの根幹は、現在の情報から未来を予測する先回り機能にある。
-自分の行動の結果を待って、フィードバックによって制御していたのでは間に合わない。予測をし、未来に備え、なおかつ自分の予測がはずれた場合の対応が必要。
…現在の情報から未来の情報を予測するのに連想記憶をつかう。
…記憶はどうすればわかるのか
-記憶は、情報処理の現場である大脳皮質にある。
-新しい経験をそのまま記憶したのでは、古くからの記憶と矛盾し混乱が起こる。
そこでひとまず海馬に蓄え整理し、必要なものをこれまでの記憶と整合するようにしながら、長期にわたり移しかえる。
-海馬は、柔軟な組織である。結合の重みがすばやくかわり、神経幹細胞があり新しいニューロンが生まれ、死滅したものを補っている。
-海馬では、情報が一時的に符号化され、連想の仕組みが働き、いずれは長期記憶に移されるため、新しい細胞が入っても全体の動作を乱さずうまくやっていける。
-脳の情報処理では、脳波が示すいろいろな振動があり、ニューロンがどこで興奮するか、その同期をとっているらしい。
-振動とその同期は異なる情報をつなぐ大切な役割?
・・強化学習:教師は必ずしもいない。
…学習認識機械パーセプトロン
…連想記憶モデル-多段決定過程(確率的揺らぎが入る場合マルコフ決定過程)
-強化学習 -同期と振動
・・結合問題:色と形は違う場所で認識する。色と形の組み合わせは、どうして結合するのか。
・脳の仕組みを知るには、ゲノムから分子の働き、細胞、ネットワーク、情報へと進まねばならない。
第3の手がかり…神経回路網
□谷 淳(ロボット)(10)ロボットから脳を読み解く
(自律ロボットを用いた工学的、心理学的、脳科学的アプローチから、人間の認知行動がどう生まれるか模索。)
・行為を生み出す脳の仕組み:巧みな動作の生成および、その心的シミュレーションを司る有機的な合成可能性のメカニズムが、脳の下頭頂小葉(IPL)で獲得されるのではないか?
・頭頂葉と運動前野の相互作用
・実験:単純な神経回路モデルの学習:階層とモジュール構造を持つ神経回路を用いた行為の学習:レベル構造化された機能の出現
・神経回路と自己組織化
・認知行動の脳内メカニズムの理解に向けて
・・脳と身体と環境とのカップリング
…実際の実験結果においては、行為単位と神経細胞群は、多対多のマッピング。
…さらにより分散的な表現が自己組織化される現象。(非明示的な現象)
…さらなる解析を加えると、内部に潜んだ構造が見えてくる。(汎化学習)(文脈に依存した構造処理)
第3の手がかり…神経回路網
□深井 朋機 (6)脳はどのように情報を伝えるのか
(脳は生物進化が生み出した高度で柔軟な情報処理システム。
様々なタイプのニューロンとシナプスの結合によって形成される複雑なネットワーク。
高次機能を実現するメカニズムを、理論的に解明する事を目指す。)
・脳の情報伝達
・・スパイクが脳活動を支配する。(脳の容積1.4リットル、その中に140億のニューロン。)
…脳がどのように情報を表現しているのか。
…スパイクがニューロン回路による情報の表現や伝達に重要な役割。(未解決)
・・脳はスパイク列を使い分ける。
…同期発火、(発火の関係性)個々のスパイクのミリ秒のタイミング。
…振動発火
…ニューロンの発火には、数10~100程のスパイク入力が必要。
…情報伝達表現-個々のニューロンの膜電位のリズミックな振動を伴う同期発火。
-振動現象を伴わない同期発火。
…振動的な脳活動-脳波(10ヘルツ)重要な周波数の波。
・・「結びつけ問題」が結びつけた振動と情報表現。
…ある点に応答している一次視覚野のニューロンは、その点が何の一部であろうと応答は変えないはず。
…しかし、認知の最終段階では、一次視覚野での視覚対象の断片的情報が、意味のある全体情報に正しく統合される必要がある。
この統合化の問題を「結びつけ問題」と呼ぶ。・・未解決な情報の統合問題
・注意を喚起する振動
・・同期発火の機能的役割についての仮説。
…振動的な同期活動
…ガンマ振動の同期活動-注意のトップダウンの制御メカニズム(仮説)。
・・ガンマ振動と視覚的注意。 ・・ニューロンはシナプス入力の積分器。
・・海馬の場所を記憶するニューロン。
犬のlarengeal麻痺
・同期振動の生成メカニズム
・・抑制性ニューロンの回路と競合原理。 ・・皮質マップの自己組織化。
・・抑制性ニューロンが脳の回路を同期させる?
・・抑制性神経回路と同期発火
…抑制性ニューロン間に、GABA性の化学シナプス以外の結合がある。
…電気的シナプス(ギャップ結合)は信号伝達が早い。
・・抑制性神経回路の双安定性。
…化学的結合と電気的結合を同時に持つ。
…同期発火と非同期発火の両方の状態を安定に保つ。
…電気的シナプスを介した結合は、同期振動に導く。
・抑制性ニューロン以外の可能性(振動的な同期活動を生成できる回路メカニズム。)
・・バースト発火説
・・シータ波の脳活動と大域的同期。 ・・周波数を記憶するニューロン。
・・皮質ニューロンによる記憶保持。(持続発火)
・同期検出のメカニズム
・・スパイク時間依存のシナプス可塑性(伝達効率の変化)。
…シナプスの長期増強、長期抑圧
・可塑性とニューロンの活動
・・徐波睡眠中の大脳皮質ニューロンの振動的活動。
…リラックス-アルファ波
…睡眠状態に移行-デルタ波(ゆっくりした振動数)-徐波睡眠
…徐波睡眠中の大脳新皮質のニューロンは、ダウン状態(スパイクを発生しないような静止膜電位の状態)とアップ状態(発火いき値の近辺でスパイクの発生が起きる高膜電位の状態)の間を自発的に遷移している。
・・神経回路は自己組織化される。 ・・環境を学習していく。
・大規模神経回路の形成メカニズム
・・大脳皮質の自発的神経活動は雪崩ににる。
…シナプスの可塑性は、大人の脳にも存在するが、視覚認知など脳の基本的な機能や、
それに必要な神経回路構造は、臨界期と呼ばれる特別な時期に発達し、それを過ぎると獲得が難しい。
…神経雪崩とよばれる同期発火現象。(自発的に発生。)
・・臨海プロセス ・・作業仮説
・・複数であるほど強い。(シンファイア・チェイン)
…隣接する2/3層の興奮性ニューロンがお互いに連結しているときは、
それらは、他の2/3層ニューロンや、4層ニューロンからの興奮性シナプス入力をしばしば共有する。
…これは、大脳皮質の2/3層では、特定の興奮性ニューロン同士が連結して、お互いに独立した精緻なサブ・ネットワークを形作ることを示唆している。
・・ニューロンは面白い情報処理素子
(神経活動の振動と同期現象から、脳がどのように情報を表現しているかを考えてきた。)
ニューロンといっても、発火パターンや、神経調節因子などの化学物質による作用、
細胞内のCa2+信号伝達系の設計など様々。(仮説主導型の研究が求められる。)
第3の手がかり…神経回路網
□中原 裕之(情動、報酬系)(11)快楽が脳を創る
(神経細胞集団の発火活動の時空間パターンから、脳の多様な階層性に支えられ、遺伝子の制御と経験に基づく学習を経て、心と知能が生まれてくる。脳の各階層の数理構造の解明と階層を貫く数理理論を築き、脳の情報処理の原理に迫る。)
・脳の活動のほとんどは「意識」には上ってこない。
・人間の脳は、10年ぶりにあった友人でもその名前と顔を一致させてしまう。(すごい計算)
・脳は計算する。(入力信号から出力信号への変換、情報処理)喜怒哀楽も脳の情報処理の一部。
・脳という「もの」-脳は物質。-精緻な構造と多様な部位を持つ。
心や知能が生み出されているとき、そこに含まれる物質からの影響を受けつつ、立ち現れてくる。
・脳は、最初は一つの受精卵という「もの}。
脳の学習は、シナプスの変化-"良い方向"
脳の情報処理には、隠されたデザイン(あらかじめ備わっている学習能力)。
デザインの根幹に"良い方向"の決め方。
n次の相互作用
"良い方向"=快楽(各神経細胞が快楽を求めて情報処理を変化させていく。)
脳は先読みをする。-脳の中で様々な未来を作り出す。-想像力と創造力。
思いがけない快楽とドーパミン神経細胞
ドーパミンの学習効果-「予測されていた快」と「実際得られた快」の差に反応。
神経細胞間の結線の変化(シナプスの重みの変化)
・脳の強化学習-報酬予測誤差
「生体」はある「状態」のなかで、主体的にある「行動」をする。
強化学習アルゴリズム
強化学習の報酬予測誤差
・強化学習による脳研究の進展(大脳皮質-大脳基底核回路)
・ 人文科学への脳科学の広がり
・社会的判断と社会的人格
脳の中に存在する「もの」が、心の働き、脳の情報処理を変える。オキシトニンがドーパミンとの相互作用の中から、どのような変数に作用するのか、それがどのような学習を"良い方向"に作り上げるのに効いてくるかが問われる。
「快楽が脳を創る。」
第2の手がかり…脳の情報の流れを生み出した進化の過程
□岡ノ谷一夫(言語)(4)言語の起源と脳の進化
(言語の生物学的起源を理解しようと。生物言語研究チーム)
・新たな意味を創りだす
・・ことばは、「象徴機能をもつ記号(単語)を、限定された順番(文法)で結合して、森羅万象との対応をつけるシステム。」
・言語と脳の関係
・・言語の起源を考える。
・・言語と脳の対応(大脳皮質の機能分担には個人差がある。)
・・純粋な言語活動の抽出
・言語の起源
・・口が出力、耳が入力
・・手が出力、目が入力
・・ミラーニューロンが心を読む
・単語か文法か
・・共同生活が単語を生み出す
・・共通した音を分節化する
・・歌が言語の起源?
・言語の進化
・・人間言語の進化と自己家畜化
・・ジュウシマツと人間に共通した脳の仕組み
・私の言語起源論
・・歌をうたう種は脳が発達する
・・「歌が言語の起源となった」相互文節か仮説
どうやって証明してゆくか?
第2の手がかり…脳の情報の流れを生み出した進化の過程
□入来 篤史(道具)(3)知性の起源-未来を創る手と脳のしくみ
(身体の構造や運動に立脚した象徴概念形成。
推論、論理思考など人間の知的脳機能の萌芽、自己意識の確立、~:知的脳機能研究グループ)
▼ヒトは生物である。-それは秩序を作る命を生み出した。
人間の「賢さ」を特徴づける性質:「言葉を使う」「火を使う」『道具を使う』
…過去・現在・未来という時間の流れも、人間の賢さがあって創り出された概念。
(人間精神の生物学的メカニズム)
…この宇宙が始まって以来、この世界は放っておけば混沌へと向かいつつ、時々どこかに局所的な秩序を生み出しては、また消失しながら変化している。
決して継続したり再生産されたりはしない。
・・ある時地球上に、「秩序」を次々と再生産しながら、存在し続けるシステムが産み出された。(生命)
▼ヒトは動物である。-それは動くために脳を産み出した。
・・動物の神経系は、動くために情報を処理する。
…環境の状況によって、その時々に一番適した運動を、ほとんど自動的に行なえる。
(一連の「自然現象」の一部?)
・・ほとんどの脊椎動物は、鰭や四肢が身体の横や下側についていて、自分で見ることはできない。
…鰭や四肢や翼や手足のコントロールは、もっぱら本能的に決まった運動プログラムに頼っている。(触覚などのフィードバックも、目で確かめる必要はなかった。)
…行為を発動する直接的原因としての「意図的なもの」は、行為する主体というよりも、その場の環境の中にある。(感覚運動に心はいらない。)
▽身体を動かす主体である心と、動かされる客体である身体を分離して考えるのは、むしろ不合理。
▼ヒトの手と目の特異な形態。-それは動かすための装置となった。
・・霊長類が出現して、手が移動運動から解放され、自己以外の環境中の事物を操作し、その結果を顔の前に並んだ両眼で見て詳細に確認できるようになり、様相は変化。
・・目や手から入る感覚情報や、細かな手に運動に関わる情報を処理する脳内神経回路も、それに適応して進化し、様相は一変。
▽ 動かす「主体」である身体と、動かされる「客体」たる身体外の事物が、物理的に分離してくる。
・・器用な「手」と精巧な「眼」の出現
…進化した霊長類の前肢、手、視覚能力は、手に集中した精巧な体性感覚フィードバックを、視覚的に確認できるようになる。
…また手探りで周囲を「触覚検索」することが可能になり、手は感覚装置にもなった。
…手探りで物を探し、空間を知覚し、それを視覚情報と照合できるようになり、
…同時に、視覚的に知覚した空間を、手運動に伴う体性感覚でも検証、確認できるようになった。
▼見て確かめて巧みに動かす脳の仕組み-それは自己の動きを自覚させた。
・・手と眼の特殊性と、それをコントロールする大脳の神経メカニズム。
・・神経情報が次第に複雑に統合されていく。
…手に関する体性感覚情報は、前頭頂葉において、後方に向かうに従って逐次、情報の統合的で階層的な情報処理が進んでいく。
…そして頭頂連合野の入り口では、具体的な手の機能的な形の表象をつくるために、視覚情報との統合の準備が整いつつあるという段階まで到達。
▽視覚の階層的情報処理
▼道具を使う脳神経の働き-それは物を動かす心を産み出した。
・・外界の事物を手に持ち、それを身体の延長として動かした時(道具)、道具が身体の一部になると同時に、身体は道具と同様の事物として「客体化」されて、脳内に表象されるようになった。
▽自己の身体が客体化され分離されると、それを「動かす」脳神経系の機能の内に、独立した地位を占める「主体」を想定せざるを得なくなる。
(その仮想的な主体につけられた名称が、意思を持ち感情を抱く座である「心」。)
・・身体と道具スキルの獲得に伴う頭頂葉の拡大進化。
・・性質の異なる情報の統合。
・・ヒトの思考性癖に共通する傾向。
…時間をはじめ様々な概念を空間的に考えたり表現している。
…また、それを操作する思考過程を様々な身体行為に当てはめて表現する傾向を持つ。
▽つまり、高次の知性は、頭頂葉における手と空間の形に関する情報処理過程に帰着する。
▽さらに、それを操作するために後に進化した前頭前皮質との相互作用によって実現されている。
▼ヒトは心を宿し道具世界に生きる。-それは時間の流れを産み出し、未来を創った。
・・人間的行動の構造
…動物は環境の中で自然に、おそらく自動的に振舞っている。
…われわれが他者の行動を観察する時、それは他者の脳なので「擬人化」してしまう。
…自己の脳を見ると(観察)、われわれは「自由意思」によって身体を動かしていると何故か無条件に信じているが、実は、意思発動よりはるか前から、運動の発現に向けて活動を開始している。
…つまり、脳が自動的に起こす身体運動を、後から解釈して、あたかも自分の意思によって発動していると見なしているに過ぎない。
▽「行動する主体」である肢体と脳のセットである「身体」から、
「解釈する主体」である「自己意識」が、いつのまにか独立し、
自己の身体を対象化して、それを解釈しはじめたとするならば、
この身体行動と自己意識との付かず離れずの関係性のありようの中に、
精神の発露たる人間的行動の基盤を見出すことができるかも。
・・「意思」を物理的に証明できない!?…
…人間的行動:動機、意思、行為、結果、(法体系)
…人間は、自分の「意思」を観察する別の主体を想定することができる。
・・人間文明における意思と行為の分離。
…その契機は、道具使用の開始。
…この活動は、この脳神経活動においては、意図、身体、行為が明確に分離して表現されはじめた。
▽「心の理論」の芽生え
…自己の脳神経の機能の内に「心」が想定されると、主体は、身体が時間を越えて永続的に続くことに気づき、次第に確固とした自己の概念が確立していく。
…こうして、心を持った複数の主体は、相互に心を認め合い、「心の理論」が芽生える。
…やがて、再帰的に自己をも制御対象として、自制心や克己心にもとづく精神文明を産み出し、
…一方、自然を操作対象とした科学技術文明が発展してゆく。
…行為から分離された自己の意識による、行為の「型式」への独立した興味によって、
その発動の主体である自己を客観化し、対象化でき、模倣、定式化、再構築が可能になって、それによって文明が発生。
…そして、その「型式」を記述する手段として、言語も並行して生まれたのかも。
・・統一的自己の生物学的起源(?)
…何種類の「自己」-いろいろな行為に、その行為を発動する主体である「自己」を想定できる。
・・機能を自己増殖させる臓器
・・「心」はどこへ向かうのか?
…心と自己は、物理的な脳と身体を介して統一されていた。
(ネットでつながれた近未来世界では、身体を離れ、電子社会を浮遊する自己はどうなるのでしょうか?(?)
第4の手がかり…疾患から
□西道 隆臣 (7)アルツハイマー病を科学する
(関連タンパク質の代謝を理解し、脳老化制御が可能にと期待。)
・アルツハイマー病因果関係の樹立へ。
アミロイドβペプチドの蓄積→タウタンパク質蓄積→神経細胞死
・アミロイド・ペプチドの産生
・・ペプチド:アミノ酸の重合体
・・アミノ酸:アミノ基(-NH2)とカルボキシ基(-COOH)を有する。
・・カルボキシ基とアミノ基が結合する。
(アミノ基のある(残る)側をアミノ末端。カルボキシ基のある(残る)側をカルボキシ末端)
・・Aβは、40のアミノ酸が重合したペプチド
第4の手がかり…疾患から
□加藤 忠史 (9)精神疾患から脳を探る
(躁うつ病の原因をミトコンドリア機能障害仮説と網羅的解析の両面から探求。)
・性格と遺伝子
セロトニン、ドーパミン)2つの神経伝達物質に関わる遺伝子。
これらの神経伝達物質をもつ神経細胞は、脳幹部にしかなく、脳全体の機能を調節する働き。
・ストレスと脳…ストレスは脳というよりも身体全体に影響。
・・ストレスによる身体の反応の主な2つの経路
一つ、交感神経系の緊張(危険が迫った場合の身体的反応)
脊髄~ ~全身の臓器に神経を送る。 視床下部から信号。
一つ、視床下部→下垂体→副腎皮質(HPA)系の反応。ストレスに対する適応。
・細胞が記憶する「DNAのメチル化」
シトシン塩基がメチル化(-CH3)→メッセンジャーRNAのできる量に影響。
・精神疾患、
うつ病(新しい神経細胞ができる。)
統合失調症(自我の機能を担う神経系の発達に障害。)
躁うつ病(気分を安定させるような神経系の細胞が、年齢と共に失われて(病気)
→精神疾患も身体の変調。)
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